花壇に座り込んで頭を抱える早羽。



「そしたら………嫁に学校をやめてほしいってせばまれたんや。こんな事件が起きたんやけど、それでもなんやかんや生徒のことは好きや。だから、断ったら「貴方は殺人を犯した子供達を育てる人間側に立つの!?!最低ね!!!子供が死んでたかもしれないっていうのに!!」って囃し立てられたんや………」



言葉に詰まった。



早羽の奥さんも、子供が生まれたばかりの人だからそういうのには敏感な時期なのだろう。



敵対する気持ちも、分からないでもない。



でも、早羽が誰よりも生徒のことを思うこの仕事を、誇りに思っていたことも分かるから、尚更どう言えばいいか。



「でもな……、嫁の言うことも分かるんや。あのまま俺が呑気に教師を生半可な気持ちで続けてたら、子供と嫁が死んでたかもしれへんって思ったらーーー」



手をぐっと握りしめ、額に抑え込む。



「もう、この手で黒板に文字一つ書けへん。書いてない今でも分かる。完全に手が止まるんや………」




「早羽………」



「修………俺ら、どうして教師を続けられてたんやろうな。今、やっと気づいたわ。周りの生徒に生かされてた、学ばされてたって事を俺ら気づいてなかった。俺らが主導権握ってるって、短歌を切ってたんや」




全てを悟ったような顔をして。



彼はその後、中庭を後にした。



その背中を追いたかったけれど、無理だった。