「おい修、松阪と喧嘩したんやろ?」
無言でコーヒを口にしたが、不味い。
「松阪から話を聞いたで?やり合ったんやな」
「向こうが殴ってきただけで、俺はやり返してない。……無神経な事は言ってしまったけど」
「お前はそれを改めなあかんな。今後」
あの出来事の翌日、昼休み時間。
今日は普段通りの日常を謳歌できてる。
嵐の前の静けさのような、平穏は何処か居心地が悪くて。
「今日は、松阪のこと………虐めないんやな。雪」
「飽きたのかもしれない」
そうであってほしいと心から願うことしかできないが、今はそれどころではない。
「謝ったりは、せぇーへんの?」
「謝ったとして、許してくれると思うか?俺は、松阪の自尊心を踏みにじったし」
「だけどワイら、親友やろ?」
「所々、俺らだって松阪がいじめられても立ち向かえない場面があったのにか?」
重苦しい空気が、俺たちを包んで沈黙が広がる。
「仕方ないやないか………。それぞれ、俺らだって親友やとしても守らなければならんことだってあるんや。それに、ワイらだって何もしてないわけや無いやろ?」
「それは本人が決めることだ」
松阪がいじめを受けている張本人なのだから、頼れる人間は本人しか知り得ないように。
周りの人間が、松阪の気持ちも知らず助けているだなんて、正義感ぶるのはおかしい話だ。
「とにかくやな………修。お前は謝れ。謝らんかったら、一生後悔するで?」
「少し、考えさせてくれ。俺はアイツと一緒にいられる存在ではないかもしれないから」
引き留めようとする早羽を他所に、また一人になろうとしたら。


