「元々、僕こういう場所では苛められっ子だったからさ。慣れてるんだ」
「そこまでして………どうして勇気を庇ったり、学校の野郎どもを攻撃しないんだ。おかしいだろ。何も……悪い事してないのに」
「本当に………そうだよね。笑っちゃう」
その笑みは、何処か遠い目をしているようで。
「でもさ、生徒を恨んだ所でーーー何も変わらない」
「変わらない?」
「だって、まだ彼らは生きて十数年しか経っていない小さな子供さ。そう考えたら、間違いだって犯すよ」
「間違い、間違いってーーー」
雑巾を奪い取って、松阪の手を奪って掴んだ。
「こんなに、傷ついてるのにか!!」
握った手には、リストカットの跡。
必死にそれは、松阪が戦ってきた証。
「もう、無理すんなよ!!言い方悪いかも知んないけど、俺達はできることはやったはずだ。ここまでして、生徒を守る必要は無いんだ!!教師である俺たちが倒れてしまったら、元も子もないだろ!!それが無理なら、教師を辞めるべきだ!!」
松阪は俯く。
手にぐっと力を込めたかと思ったら、振り払った。
それもすごい力で。
「僕は、言ったよね?弱い生徒を見捨てない優しい教師になりたいって」
サラサラと空気が流れる音がする。
可笑しいな、誰もいない深夜の職員室は、恐ろしいほど不気味だなんて。


