耳を破るような声。
それは車を降りた、瞬間だ。
目に入ったのは、水びだしになった勇気。
ブレザーもズボンも、全て無残に濡れていて。
ふいに上を見上げる。
そこにいたのはーーー。
お得意の皮肉めいたつり上がった目。
金髪に銀色のピアス。
この地域の王にふさわしいオーラが彼を包んで雪は佇《たたず》んでいた。
「あ?勇気?いたの?」
冷徹な雪の声で、どっと周りにいた取り巻きが笑う。
ドン引き野次馬を引き裂いて、突き進もうとするがーーー。
早羽に手を引かれた。
「おい…!!離せ!!」
「辞めとけ!!修!!アイツの親、暴力団の組長やぞ?反論したら、何されるか分からんのやで?!」
足がすくみ、止まって動けなくなってしまった。
それはどうしてだ………?
自分自身の未来がなくなってしまう気がしたからなのか?
この俺達3人の居場所もなくなってしまうっていう、恐怖みたいなのを感じたかもしれない。
情けねぇと舌打ちが溢れたが、一歩も動けなくて。
「勇気、もう学校来んなよ?協調性ないやつは学校に来てもらっても、先生方も困るんだとよ」
ほらと言わんばかりに、たじろぐ俺たちを指さした雪。
「あの……アホ!!!」
「酷いよ……漬け込んだなっ!!!」
「……っ!!!」
でも実質俺達は勇気を守りきれていないからこそ、何も言えない。


