本当は、分かっていた。



校長はなんだかんだ、雪を気に入っている。


言いなりになっているから、意味なんてないんだって事を。



だけどあの場にもし俺がいたら、その生徒を怒鳴り散らしていただろう。



俺が未熟ゆえに、早羽は逃がしたのだ。


皆に気づかれないように、命令してくれたのは彼の優しさなのだろう。


結局は、松阪と早羽に助けてられてばかり。


恩返しなんて……どの口が言っている?


俺は所詮は、口だけ人間なのか?


「こんなの………転職できる訳もないな」




ふと自分の力不足を思い知らされ、校長のようになるのではないかと背筋が冷え込んだ。



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