「教師という生き物は、いなくてもいいんだよ。
だっていなくても、人間は勉強し続ける生き物だから、教える事なんてしなくてもいいのさ。
そう考えたら、なった理由なんてないよ。
ただこの日本において、教師はお金がもらえる。
僕は教えることにしか才が無かった。
だから運良く金をもらいたかっただけだ」
見てはいけないような物を、のぞいた。
「ありがとうございました」
ここから、去りたい。
「君はどうなのかい?本心から、教師として役に立ちたいと思っているのかい?」
「え?」
急にに本心を刺されてしまった気がして、足が鉛《なまり》のように止まった。
「俺は……」
「勿論《むろん》、したくないだろ?」
「……どうして」
「何十人教師を見てきたと思っているんだ。それくらい、見抜けるよ。一様校長だからね」
くるりと顔を向けた校長。
その姿は勇者も魔法使いも倒してしまった、魔王感があってとても怖い。
「君は、私と似ている」
「似ているって………」
「私も昔はそうだったよ。やる気がなく、でも未来に対して希望を捨てきれないおろか者。それは、大人子供」
心臓を握りつぶされたかと思った。
俺が起業しようとしていることを。
この校長は感づいている?
「でもね、先生っていう生き物は生徒との関係を重視する世界なんだよ?
世の中の常識を知らない時がある。
だから、ある時教師を辞めて外に出ようなんて考えたら、怖いのさ。
外に出れない葛藤《かっとう》が起きる」


