その日の放課後。
校長室に呼び出されて、地獄の空気をのみこんだ。
同僚が「魔王」と呼んでいる校長を目の前にするのは、やはり体力を削られる。
「サポートとしても、松阪が精神科医を紹介したとのことで」
「君からは、何もしなかったのかい?」
試し込むような視線を向けられ。
内心、いごこちは良くない。
だって校長は俺が勇気のことを嫌いだと、知らないわけがない。
わざと試すようなことを言っているのだから、たちが悪いに決まってる。
「そういう校長は、どうして勇気を助けないんですか?」
校長はくるりと窓際に顔を向けて。
夕日を眺め、ほくそ笑む。
「自分の力でなければ、生徒なんて成長しない。ここに上り詰める為に何回思い知らされたこか」
だからといって俺達下っ端教師達に、めんどくさい生徒を押し付けている。
どうせ、黒い理由なのだろう。
自分は助けない言い訳になると思っているのだろうか?
「さぁ、夜も深いので帰りなさい。修先生」
「あの」
「なんだね?」
「校長は、何故教師をやっているんです?」
「お金」
「………お金」


