勇気の歌(Summerloveの前の話)


「過去のやったことは、取り返しがつかないよ?」



「それでもだ。人間は罪を犯さない人間は誰一人としていない。自分の得意なことで、出来ることで世の中に対して生きてる奴が大半。だいたいそんなものだ」




「先生もあるの?」




「あるぞ。俺は、母親の反対を押し切って教師になった」





「人に教えることは得意だったから、体育を選んで仕事をしてる」




「そっか………」



勇気がゆっくり、立ち上がった。



「なら……、考えてみるよ。好きな事で恩返しができる日が来る為に自分にできることをする。そう考えれば、学校に行くことも少しは胸が軽くなる」




俺は内心ホッとしていた。



最低な考えにはなるとは思う。



だがもう勇気と関わることがないと、たかをくくっていたから。



「今日はありがとうございました。修先生」




「いいえ。当然の事をしたまでです」




ある程度のお世辞を言って、二言母親と言葉をかわしたあと。




「松阪先生がまた、新しい精神科医の人を紹介してくれたのはとても有り難かったです。一緒に相談して、話し合ってくれたのですね」



「え………あぁ」



間髪《かんぱつ》入れずにそう言われたもので、言葉に詰まった。




「やっぱりお前には勝てないよ………」



去り際に少し足取りが重くなったのは身にしみた。