きっと俺自身が「教師」という生き物をやっと理解した特別な日。
ーーだったとしか言いようがない。
「「死ぬ」っていうことはな、自分が一番大切にしているものを捨てるってことだ。お前はそれを分かってるのか?」
「………これしか方法なんかないんだよ」
声が震え、身を縮こませた。
それはまるでお腹の中に眠る、赤子のよう。
「僕はずっと空気の読めない何かだった。だからこそ、もう二度と人に迷惑をかけたくない。だから、こうして閉じこもって息絶えようと願った。そう思ったのに、どうして………」
苦しそうなうめき声。
ずーっと、生まれた時からそんな周囲の視線を感じ取ってきたのだろうか。
「なぁ、だからこそ、貢献するべきなんじゃないのか?自分の出来ることで恩返しをするべきだ」
「………恩返し?」
「今まで、たくさんの人間を不幸にしてきたと。そうお前は考えているのなら、お前の得意なことで返せよ。それと同じくらい、人を幸せにすればむくいになるんじゃないのかって話だ」
勇気は背を向けて、黙り込む。


