「好きな事ね……、それで生きていくか………」
そう呟いた瞬間、勇気は吹き出した。
「先生って、僕が歌を主軸にして食べていくために不登校になって逃げようとしてるって思ってる?」
ケタケタと笑う、その姿は何処となく精力がない。
生きている屍の様なーーーそんな感じ。
「僕もそんな事、前までは思ってたな………。だけどね、今はもう違うんだ……動画再生もあんまり上がんないし。強いて言うならヤケクソで、自然に息絶えるまで歌ってる。そんな感じ」
勇気はベッドに移動し、身を投げる。
父親から貰ったのであろう、腕時計がブルーライトで銀色に反射する。
「もう、どうだっていいんだ………。そう、僕の人生何をやっても上手くいかない。そんな毎日だったからさ。それなら好きなことに溺れて、死んだほうがマシだって思って「終わらせるために」こうして歌ってるの」
「「終わらせるため」……?」
「強いて言うなら「歌いながら自殺」って感じかな。もう、3日もご飯食べてないからそれで死のうかなって」
あぁ、どうして俺は気づかなかったんだろう。
俺はすっかり勇気が、あり得ないほどに痩せ細っている事に。
「………お前、それで本当にいいのか?」
勇気は目をつむり、背を向けた。
「お前の歌声を聞く限り、楽しそうにしか俺は聞こえなかったぞ?」
「幻聴だよ」
「嘘だな」
俺は無視されても、続けた。
理由は………よくわからない。


