「隼斗、どうして!?」



「さぁな。

帰るぞ!!」



「聞きたいか?」




まるで針を、ふんだかのような。


ピリついた教師たちの目線が、俺をつぶす。



そんな様子を友香はつゆ知らず。


ゆっくりとたてに首を振る。


目の前に出された、宝箱をそっとでのぞきこむ子ウサギのよう。



隼斗もつられるように、真面目な顔つきで。


一瞬本当に話そうか、ためらった。


だが聞きたいというのなら、話す時なのかもしれない。



「話してみよう」って思ったこの時。



「彼」との「サヨナラ」だったのかもしれない。


「なら夕方、あの桜の木の下で話してやる。

文句は言うなよ?」




ぱっと明るくなった友香。



俺はこの話をして、彼女がどんな顔をするのか。


知るよしは無いし、自己責任だ《じこせきにん》。



ーー「約束をしてしまった事」ーー


思い出したのは、友香が原因でもあるから。


そして、それは俺が次のステージに行くためになのかもしれない。




友香が去った瞬間、資料がドサリと置かれた。



簡単には帰らせないと校長から。



でも、絶対に終わらせる。





あの日を忘れないために、しゃべらなかっただけだから。



俺は憎くて死ねばいいという生徒がいたのも事実だし。