それはあの「助けたい」という気持ちの理由であり彼を突き動かす核心に触れたみたいで、少し怖かった。
でもーーー。
「………そうか。お前にそう言ってもらえて、嬉しいよ」
心のなかでやっぱりこいつも、人なりの影を持っていることを喜んでしまっている俺がいた。
所詮俺は、性格が悪かったのだなと思い知るのだけど。
「なら……どうしたらいいんだろう。俺、顔を合わせたけどアイツ聞く耳を持とうとしなかったから………もう、出来ることはない………」
「うーん、それならだけど勇気くんの好きな事を肯定したうえで学校に来るように言ってみたらどうかな?」
それは、斜め上の発想だ。
「好きなもののために学校に来いと?」
「そうだね。そうしたら勇気くんも受け入れてくれる素直な器はあると思うよ?」
勇気の好きなものーーーそれはきっと「歌」に違いない。
あんな楽しそうな、洗練された歌声は日頃から隠れて歌っているのだろうからーーー好きじゃないものの訳が無い。
「ーーーちょっと、出かけてくる」
「あ、校長には言っておくから!!」
「ありがとう」
この時どうして俺は、早々と足を向けていたのかよくわからない。
それは多分、勇気のためではないというのは、はっきりしている。


