ただあるのは、狼狽えた一粒の雫を流す歪んだ顔が机に浮かんでいるだけだ。
静けさがますなか、さらに雨は続く。
「………見抜かれていたんですね」
震える声で、語りだした彼女。
顔を覆って鼻をすする。
「幼少期から、本当にあの子は他の子供と違ってるってーーー分かってたのに」
「分かっていた………それなら、どうして勇気のためや思って………行動しかなったんです?やっぱり葛藤……?」
「それも………ありました。でも、私の元夫が勇気に障害があることを………認めようとしなかったんです」
話はこうだった。
勇気が3歳になった頃から、右向け右、左向け左という概念をあまり理解していなかった事を母親は気付いた。
そこでおかしいと思い、病院に駆けつけた結果adhdと自閉症だと診断された。
ところがーーお父さんがその診断書を燃やして捨てた。
障害があることをもみ消して、普通の子どもに育てようと、力で制圧してきたとのことだった。
「あの頃は、夫も仕事のストレスでおかしくなっていた事もあって、耐えるしか無かった。そして勇気がまだ子供だからきっと障害があるなんて、本当はまだわからないんじゃないかって甘く見ていたんです」
悲劇は続き学校が高度な勉強場になっていくにつれて、皆と同じ事ができない、空気が読めないという奇行が目立つように。
2人は育て方の価値観が元凶の喧嘩が耐えなくなってしまいーーー。
「夫が別の所の人に出向いてしまったんです」


