すると丁度お母さんが返ってきた。


「あの、勇気は?」


「まだ、出たがらない感じで………」



「アイツは一体何をしているんだか………」



「多分ですけど……歌い手というネット活動をしているんだと思います」



「……歌い手?何やそれ?って、おっと。なんですか?」



歌い手とは、ネット上で人気の曲を自分の歌でカバーする人たちのことを指すようだ。



近年だと、ボカロ曲というロボットに歌わせた歌を人間が歌い動画に加工したのが、歌い手と呼ばれる総称らしい。



「アイツ………いや、勇気くんにも夢はあったんやな……んじゃなくて、あったんですね」



「やっと自分のやりたいことに目を向けれるようになってきた自覚はあるみたいなんです」



「それは……大丈夫なんですか?俺的には引きこもりを悪化させてしまう原因になってしまうかもしれない気がするんですが……」



「それはそうでしょうけど………おたくの学校でいじめもあって無理やり通わせろと?」



少しお母さんを怒らせた。



今更ながら自分の発言に、殴りたくなった。



「えっと、素敵な趣味を持たれて勇気くんはすごいと思います。僕は、そんなに打ち込めるような趣味はないからちょっと羨ましいな……」



俯く俺に肩入れして、松坂に軽く睨まれた。



そうだ。



俺は勇気のことが嫌いだけど、副担任。



しっかりしなきゃ。