「……二人とも、色々大変だと思うけどそれでも教師だよね?生徒を守ることも仕事だよ?立ち上がろうよ!!」



真剣な眼差しで天使のような容貌の彼に言われてしまえば、断る事も出来なかった。



いや、要望だけじゃない。



純粋に生徒を想う心があったからこそ、俺は松坂を好きになったわけで。



「貴方方しかいないのですよ」



天使の後ろに佇む、悪魔であり怠惰を司る校長が冷ややかな目を向けていたのもまた事実。



「修………どうしたらええんや………俺ら」




正直このとき、俺は勇気という生徒の事を全くもって助けたいなど一ミリも思わなかった。



何を考えているのかも不明だし、その上鈍臭く周りに合わせようとしない行動、言動が鼻につくからだ。



だけど………だけど。



「………分かりました。俺たちが引き受けましょう」



周りの先生達がどよめいた。



それは学園中に知れ渡った、ちょっと変わった問題児であったから誰も関わろうとしたくなかった反動でもあって。



「修………ほんまにゆうてんのか?!」




「だって、もう誰も勇気の事を助けたいと思わないんだろ?周りの先生方も手を挙げないんだから」



周りの先生達は目を伏せた。



そりゃ、そうなのかもしれない。



早羽のあのセクハラ発言で皆職員室は動揺に包まれて、つつけない雰囲気になっているのだから。



それだけじゃない。



今までの彼の行動は、先生、そして学園の生徒達を困惑させてるから。



話を聞きたくないような雰囲気を醸し出している。



だけどーーー俺はその彼を守ろうとしている。



嫌いで殺したいし、死ねばいいと心の中で何回呪ったことか。