「……え、?」
「本当にごめんなさい、謝るわ」
想定していなかった言葉につい視線を上げると母が頭を下げていた。
「…なんで謝るの?」
「嫌な気持ちにさせたでしょう?」
「それは、」
「本当はこの前帰って来た時に言おうと思ってたの」
…確かに、何か言おうとしてたのは気付いてた。
気付いていながら無視したのは私だ。
「でも…、駄目ね。貴女を前にするとどうも上手くいかない」
自嘲するように少しだけ笑った母は初めて見る表情をしていた。
「いつも素直になれなくて、真逆な事を言ってしまう」
「お母さん、」
「昨日貴女からメールが来た時、心臓が止まるかと思った。何を言われるんだろうって。…最悪、親子の縁を切りたいとか」
「っそんな事、私、」
「貴女はいつだって“お父さん”だったから」
寂しそうに笑った表情は今までに見たことがなくて戸惑った。

