「…確かに、俺にはお前の気持ちは分かってやれない。でも、後悔する事になるのは分かる」
「何を、」
「お前はもう俺にとって他人じゃないし、知り合いでもない。俺はちょっとだけ長く生きてるから、分かるんだよ」
たった数年じゃん。
たったその程度で何が分かるって言うの。
私が心の奥底に隠してた寂しさとか孤独を、理人さんは躊躇なく暴いていく気がした。
──────『雪は捨て子なんだよ』
見た目じゃ分からないその経験が、彼をより一層大人にさせたのか。
「……仕事中だから、きっと連絡取れませんよ」
「別に電話しろって言ってねぇよ。メール送ればそのうち返信来るだろ」
「でも…」
こわい。
俯いていた顔をそっと上げると、理人さんと目が合ってふっと優しく微笑んだ。
「もし突き放されたら俺が責任取ってやるよ」
その言葉の真意は分からない。
でも、心の中が温かくて何かがふわふわしている感じがした。
理人さんの言葉は不思議と安心できる。
信用できる。
《話したい事があります。時間ありますか。》
滅多に送らないメールを母に送った。

