お腹辺りまでの高さがある空いているテーブルの傍に立ち、ユズが居る方へと視線を移した。
これじゃまるで保護者だな、と思いながらボーッと人混みを眺めているといきなり見知らぬ男の人に手首を掴まれた。
「えっ、」
「今1人?かわいーね」
「…いや、あの、」
「俺らVIP取ってんだけど一緒に行かない?」
特別に上がらせてあげるよ、とニヤニヤしながら言われ戸惑った。
とん、と肩に乗せられた手から広がるように鳥肌が立つ。
…気持ち悪い。
どうしよう、これ本当にやばいやつなんじゃ…。
「…すみません、友達と来てるので」
「いーじゃんいーじゃん。後でそのお友達も呼べば!」
「へぇ、よく見ると可愛いなあ。名前は?」
「あの、手、離してください…」
「ま、上でじっくり聞けばいいか」
「行こ!」
無理矢理手を引かれ冷や汗が背中を伝った。
周りにいる人はこの状況を見慣れているのか興味なさそうに、むしろ見られてもいなかった。
ナンパなんて、生まれて初めてだ。
掴まれる力が強くて抵抗しても手を離してくれない。
「っ、離して、」
涙目になった時だった。

