「…あの、そんなに見られたら食べにくいんですけど……」
「あ、悪い」
バツが悪そうに顔を逸らした理人さんをちらっと見ると毛先がまだ濡れている事に気付いた。
「お風呂、入ってたんですか?」
「うん」
「髪がまだ濡れてますよ」
「放っといたら乾く」
「風邪引きますよ」
「お前が言うな馬鹿」
「馬鹿って、」
「夏風邪は馬鹿が引くんだよ」
アイス食ったら薬飲めよ、と言って理人さんは寝室から出て行ってしまった。
“見るな”って言ったから出てっちゃったのかな…。
もう少し傍に、居てほしかったのに…。
半分くらい食べたところで限界が来てしまい少し残してしまった。
トレーの上に置かれていた薬を飲んで再び横になると次第に眠気が襲ってきて意識がふわふわとしてくる。
さっきまで眠ってたのにすぐに眠気が襲ってくるなんて。
…理人の匂いがするからかな。
落ち着く匂いで…。
「翠?」
今、理人さんに名前を呼ばれた気がする。
いつもは『あんた』とか『お前』とか、名前を呼ばれた事ないのに。
もう1回、呼んでほしいなぁ。
私がしっかり起きてる時に……。

