「まだ熱あるから、安静にしてろよ」
「でも、」
「病人は黙って寝てろ」
「はい…」
首元に掛けていたタオルで理人さんは濡れている自分の髪を拭きながら部屋を後にした。
お言葉に甘えて横になったまま、掛け布団を引き寄せると理人さんの匂いがした。
ふわりと甘い匂い。
柔軟剤なのか、分からないけど。
…ん、待って。
ていう事はここは寝室?理人さんの?
ハッとして、頭だけをゆっくり動かして周りを見回した。
ベッドの足元には壁一面を埋める程のクローゼット。
ベッドの脇には間接照明が置かれていて、オシャレで大人な部屋だった。
しばらくするとドアがノックされ、理人さんはトレーを持って戻って来た。
「食欲はあるか?」
「ない、です…」
「…腹に何か入れてから薬飲んだ方がいいらしいから、ひと口でも食って欲しいんだけど」
トレーをベッドサイドに置いて、見せられたのはカップのバニラアイス。
「…食べます」
「起き上がれるか?」
「はい」
ベッドボードに寄り掛かるように起き上がると、その間にアイスの蓋を開けてくれた。

