お店の屋根の下の邪魔にもならなそうな所にしゃがみ込んだ。
震える手でスマホを取り出し時間を確認すると16時を過ぎていた。
まだ16時なら怒られない。
暗くないから大丈夫。
怒られても言い訳すれば許してくれるだろう。
理人さんは優しいから。
…理人さん居ないのかな。
もう仕事に行ってるのかな。
あぁ、やっぱり連絡先聞いとくんだった。
聞いていればこんな時にすぐ連絡出来たのに。
止む気配のない雨。
夏なのに寒くて体の震えが止まらない。
このまま待って理人さんが来る保証なんてどこにもないのにどうしよう。
体もなんか怠くて動きにくい。
「そこで何してんの?」
いきなり雨が止んだと思った。
パタパタと微かに当たっていた雨粒が急に止まったから。
…そういえば今、聞き覚えのある声が聞こえた。
中性的な高くもなく低くもない声。
ゆっくり見上げると、ビニール傘でこれ以上雨に当たらないようにしてくれている理人さんが訝しげに私を見下ろしていた。
…あ、今日も半袖だ。
「…はっ?お前……」
「り、ひと…さん」
絞り出すように出た私の声は思ったよりも掠れていて小さかった。
理人さんだ、そう思って思いっきり立ち上がった瞬間に視界がグラッと揺れて倒れそうになったのが分かった。
そんな私を理人さんが慌てて支えてくれたから。
「こんなとこで何やって、」
「…私どうしたらいいのか分からなくなっちゃって、」
「…とりあえず中入れ。お前熱あんぞ」

