一瞬見失った2人を必死に探してやっと見つけた。
ドクドクと心臓が鳴るのは、普段の運動不足のせいなのか緊張なのかよく分からない。
でも多分、どっちも当てはまりそう。
「今日ご飯どうする?」
「なんでもいいよ」
「あー、じゃあ、……」
人混みに紛れて微かに聞こえる声はやっぱり母だ。
でも隣に居る男の人は全く知らない人。
仲が良さそうで、まるで2人は……。
ブブッ、とスマホがバイブで震えた。
ユズからの着信が1.2件入っている。
そりゃそうだ、無理矢理出て来てしまったから。
「ぁ、」
男の人が、母の髪に触れた。
多分、ただ埃か何かが付いていたんだと思う。
「ありがとう」とふわりと微笑んだ母の表情にゾワリとした感覚が襲った。
夏なのに、寒い。
鳥肌が立っていて、震えが止まらない。
…なにそれ。なにその顔。
きもちわるい。

