「何系がいい?」
「んー、そもそも何があんの?」
「恋愛ものとー、なんかアクションもの」
「アクション映画がいいかも」
「えー」
見慣れた綺麗なスーツ。
見慣れない笑顔で、男の人と腕を組んでいる人。
胸より上までの長さの髪をふわりと巻いて。
「……え」
見慣れた…、とかいうレベルじゃない。
どうして。なんで?
「私恋愛ものがいいんだけど…って、翠?」
「………」
「どうかしたの?」
「うそ、」
「翠?」
仕事に戻ったんじゃなかったの?
仕事で男の人と腕を組むの?
その男の人は一体誰?
ヒヤリとした汗が背中を伝うのを感じた。
「ごめん、ユズ。映画はまた今度」
「えっ?翠!?」
「今度埋め合わせするから、今日は解散で!」
「はっ?ちょっと!?」
ガタッと勢いよく立ったせいで椅子が倒れそうになったのをなんとか抑え、2人を追いかけるようにカフェを出た。

