お風呂に入った私はやる事もなく眠気もない為、スマホで動画を見ていた。
本当はコンビニに行って、もしかしたら来ているかもしれない雪さんとどうでもいい話をしたかったのに。
やっぱり連絡先聞くべきだったな。
電話でも……。
ドアがノックされたのはその時だった。
もちろん、その音の主は一人しかいない。
「入るわよ」
母はベッドに横になって動画を見ていた私を眉をひそめて見つめた。
「余裕ね、課題は終わったの?」
「今日の分は終わったよ」
「課題だけやったって意味ないのよ」
「………」
はぁ、思わずため息が出そうになる。
それに母は気付いたのか更に捲し立てた。
「貴女って昔からそうよね」
「は、何が?」
「じゃ、私寝るから」
…わざわざ嫌味を言いに来たわけ?なにそれ。
「お母さんだってそうじゃん」
部屋から出て行こうとした母の背中に向けて叫んだ。
「だいたい、何しに帰って来たわけ?休暇貰ったからって今まで帰って来た事なかったくせに」
間接照明だけで照らされた私の部屋。
母の表情は私の影になってよく見えない。
「……そ。悪かったわね」
また、たった一言。
それだけ言って母は私の部屋から出て行った。
言い返す事くらいしたらいいのに。
一方的なキャッチボールをしたみたいでモヤモヤする。

