両親の離婚の原因は父親の借金だった。
母も知らぬ間に大きな借金を作っていたらしい。

借金が発覚した当時は2人はよく喧嘩をしていた。
穏やかだった父が強い口調で母に言い返していたのを初めて見て、それが強く印象に残っている。


「…そこで何してるの?」


部屋に入らないの?という視線を向けられ大人しくリビングの中に入った。

顔を見るのは久しぶりだ。

母の視線を感じつつ、知らないフリをしてそのままキッチンへと向かう。


「今日から3日間、休みを貰ったの」

「え」

「…何?私は自分の家に帰っちゃ駄目なの?」

「……別に」


月に1度しか帰って来ないくせに。
しかもそのまま仕事に戻って行く。

そんな事をいう気力も度胸も私にはない。

キッチンにあったパンとお茶を注いだコップを持って自分の部屋へと戻った。
机に置いた瞬間に、ベッドへとダイブする。


…疲れた。

今の一瞬でドっと疲れた。
いつからだっただろう。
こんなに、母に会いたくないと思い始めたのは。

母と2人暮らしを始めた時を思い出した。

今まで仕事一つだった母は元々料理が苦手で何をしても上手くいかなかった。
全て主夫だった父に任せていたからだろう。

代わりに私がやるようになって気付けばこのザマだ。