アラームの音を聞かずに自然と目が覚める時が私は1番好きかもしれない。

このまま一生夏休みが終わらなくていいのに、と本気で思ってしまう。


スマホで時間を確認するともう既に11時になっていた。
軽くご飯でも食べようかとカーテンを開けると金縛りにあったかのように体が固まった。

道路側に面した私の部屋の窓。
その窓からはうちの駐車場も見える。

そこには無いはずの車が停まっていた。

急いでスマホを確認したけど連絡は1件も来ていない。
…どうして。いつも帰って来る時は事前に連絡が来るのに。


停まっていた車は明らかに母の物だった。


恐る恐る階段を下りると消したはずのテレビの音がついていて、お昼のバラエティ番組の騒がしいBGMがリビング中に響いていた。


「…あら、やっと起きたのね」


それは私の背後から聞こえてビクッと驚いてしまった。
そんな私に怪訝な表情で見る母。


「そんなお化けでも見たような目で見ないでくれる?」

「…ごめん」


前髪をかきあげながら私の横を通り過ぎたのはやはり紛れもなく私の母親だった。