段々日が沈んでいくのを感じて、私達はやっと解散する事になった。

コンビニに来て約1時間。
どうでもいい他愛もない話を私達は1時間もしていたのだ。


「学生証、本当にありがとうございました」

「別に」

「…あの、」

「別にチクったりなんかしねぇよ。だからもうあそこには来んなよ」

「…フリですか?」

「今すぐにでも学校に電話してやろうか」

「ごめんなさい」


はぁ、と大袈裟にため息をつかれたけど素直に「分かった」と言わない私に理人さんはそれ以上何も言ってこなかった。

コンビニから家までの上り坂をゆっくり歩いていると、背後からバイクのエンジン音が聞こえた。

…あぁ、帰ってっちゃったんだ。

でも、名前を知れてよかった。
菅野理人…、すがのりひとさん。

不意に彼の甘い匂いが、近くでした気がした。