「翠」
「は、い…」
「俺は翠の事が好きだよ。俺と、付き合ってくれませんか?」
立ち直した理人さんはそっと私の両手を握り締めその言葉を言ってくれた。
栓がなくなったかのように溢れる涙に自分でも笑ってしまう。
「返事は?」
「私も、理人さんの事が好きですっ、大好きですっ、」
「付き合いたいです」と言い終わるよりも早く、理人さんの手が私の頬に触れた。
ドキドキと甘い空気が流れる中、ゆっくりと目を閉じていく。
触れた唇は思っていたよりも優しくて、温かくて、ただただ幸せだった。
春の心地よい風がふわりと吹いた瞬間に、ほんのりと香る甘い匂い。
「……ずるいです」
「…は、何が」
「耳真っ赤なくせに」
「なっ、うるさ!」
甘い空気だったのに、照れ隠しで言った私の言葉に一瞬でいつも通りになってしまった。
両耳を手で隠してムッとしている理人さんの手に触れてそっと離した。
はてなマークを浮かべる理人さんの耳元に近付いて、理人さんにだけ聞こえるように呟くと顔を真っ赤にした理人さんの反応につい笑ってしまった。
「ずっと大好きです」
END

