「へぇ、許したんだ?」
「許しましたよ。なんとか」
「なんとか?だいぶ不服そう」
「お母さん取られたみたいでなんか嫌なんです」
「そういうのは俺じゃなくて…」
「“お母さんにすぐに言う”!分かってますよ」
「…もうすれ違わねぇようにな」
大学受験も終わり無事合格したのを確認した後、理人さんは今日は車じゃなく、私のリクエストでバイクで家まで送ってくれた。
理人さんと別れ難くてまた他愛もないことを話していた。
「……ねぇ、理人さん」
「ん?」
バイクに寄りかかっていた理人さんにそっと近付いて名前呼ぶとぎゅっと心臓を握り締められるような優しい声で返事をしてくれた。
「もう、合格発表終わりました」
「え?」
「卒業もしたし」
「……うん」
「……だから、」
あの日、私の事をなんでも分かってるような理人さんが悔しくて今日は自分から言おうと決めてたのに。
何度もイメージしていた言葉をいざ言おうとすると緊張で進まなくなる。
フッと笑われたのを感じて見上げると意地悪に笑って、でも誰よりも優しい目で理人さんは私を見つめていた。

