「…翠、あの、」


停車された車内で、それまで真っ直ぐ前を向いていた理人さんの体は私の方を向いており見つめられている。


「ごっ!!」

「……“ご”?」

「合格発表まで!ダメ!!」


全てを言い終わる前につい言ってしまった。
手が震えてしまう。

理人さん、一体どんな反応するんだろうと見上げるとものすごく不服そうな表情をしていた。


「……俺まだお預けかよ」

「ごめんなさい…」

「いいよ、そういうとこが好きになったんだし」

「ぇっ、は、す、すっ!?」

「ふはっ、なんだよ」

「い、いえ…」


フッと優しく微笑む理人さんから思わず視線を逸らす。
さりげなく言われたその言葉に、簡単に動揺してしまうのが悔しい。

理人さんは私の頭をくしゃっと撫でてまたニヤリと笑った。


「合格発表の日が楽しみだな?覚悟しとけよ」

「へっ、」