「やめたの?」
「禁煙した意識は無いんだけどな」
ただなんとなく、吸わなくなっていたらしい。
吸ってる姿も様になっていてかっこよかったのに、と呟くと「煙草吸ってても良い事ないから」と返された。
運転席に座る理人さんは慣れたようにエンジンをかけた。
走り出す車の中から窓の外を眺めると見慣れた景色が流れていく。
バイクだとくっつけるのに、車だとそうはいかない。
邪魔したくないし、危ないし。
窓から運転している理人さんを見つめると、私の視線に気付いたのか理人さんはちらりと私の方を見た。
「そんな見られたら緊張すんだけど」
「ふふっ、ごめんなさい」
「ったく」
バイクじゃ見られない運転姿を見られる車も、案外良いかもしれない。
気付けばもう家に着いていた。
エンジンを止めた後、理人さんは少し口を開きかけて言い淀む。
「……翠、」
「はい」
「その…。ひとまず、おめでとう」
緊張しているのが伝わった。
理人さんが何を言おうとしているのか、何を考えているのかなんとなく察してドキドキと心臓が高鳴るのが分かる。

