「もう写真撮らなくても大丈夫?」
「うん、ユズともいっぱい撮ったし」
帰ろう、と言いかけた時だった。
「翠」と名前を呼ばれて振り返るとスーツ姿の理人さんがすぐそこに立っていた。
「え、どうして…」
「…卒業おめでとう」
「会えないって、」
「俺が会いに行きたかったから、ダメだって言ったんだよ」
恥ずかしそうに、花束を持って登場した理人さん。
そんなベタな展開に周りの子達は小さくきゃあっと黄色い悲鳴をあげたのが分かった。
「翠、写真撮ってあげるからそこ並びなさい」
ふと隣を見ると私達を見て優しく微笑んでいるお母さんがデジカメを持って見せた。
「…ばか」
嬉しいのに、素直になれなくて可愛くない事を言ってしまう。
「笑って」というお母さんのリクエストにぎこちない笑顔を見せた。

