“……卒業生、起立”
体育館に響き渡るマイクを通した先生の声。
周りにいる子達が全員涙ぐんでいるのが分かった。
きっとユズも後ろの席に座って泣いてるんだろう。
新入生としてこの学校に入学した時は他人事のように感じていた卒業式が今まさに行われている事が信じられなかった。
なんてことなく過ごすはずだった高校生活は理人さんに出会った事で一変した。
「卒業おめでとう、翠」
「お母さん、来てくれてたんだ」
「当たり前でしょ。娘の卒業式なんだから」
卒業式を終え、教室で最後のHRを終えた後廊下にいたお母さんに駆け寄った。
ビデオカメラなんて用意してるし。
ユズの家族は全員涙ぐんでる。
「あんたが無事に卒業出来るなんてっ、」
「……そっちに感動しないでよ」
そんな両親を見てユズ本人はどうやら涙が引いたらしい。

