『あんな姿の依織くん見れたのも、もしかしたら翠のおかげかもな』
「私は何もしてないのに」
『してる。少なくとも翠のおかげで俺の人生めちゃくちゃ変わった』
「良い意味で?」
『当たり前だろ』
ふんっ、と勝手に拗ねているのが電話口から聞こえてにやけてしまう。
本当に出会った頃よりも感情表現が多くなった。
それが私に対して心を開いてくれている証拠だと思うと嬉しくてたまらない。
「ねぇ、理人さん。私、後もう少しで卒業式なんですけど」
『……おう』
「卒業式の日、会いに行ってもいいですか?」
私のその言葉に理人さんの息を飲む音が電話口から聞こえた。
卒業まで待つ、と言ってくれたあの言葉を私は忘れなかったけど急に不安になってしまったから。
理人さんが私の事を好きでいてくれて、両思いで、なんて夢みたいな話が現実だったのか確かめたくなった。
『来ちゃだめ』
「え、なんで、」
『なんでも』
…卒業まで待つって、会えるって思ったのに。
分かりました、と告げてその日の電話は終わった。

