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「ごめん今日後輩に呼ばれてるから先帰ってて!」

「了解」


放課後、ユズを置いて先に帰ることに。
駅に向かうと入口の横に見慣れた姿の男の人が立っていた。


「理人さん?」

「…お。久しぶり」


初めて…、いや2度目か。
あの日会った時と同じシチュエーションに懐かしさを感じた。


「受験生よ、今帰り?」

「待ってたんですか?」

「うん、会いたくて」

「え、」

「最近全然会えてなかったし。…てか、お前春休みだったのに全然会いに来てくんなかっただろ」

「それは、忙しいと思って」

「…まぁ、俺も会いに行けなくてごめんな」


連絡は取り合っていたけど、こうして会うのは久しぶりだった。


「送る」

「ありがとうございます」

「今日は素直だな」

「いつも素直じゃないですか」

「いや、2回目会った時物凄く拒否られたから」


…理人さんも、あの時の事思い出してたんだ。


それだけでドキドキしてしまうのはもう病気なんじゃないかと思ってしまうくらい。


「学生証、もう落としてない?」

「ありますよ、ほら!」


こうやって笑い合えるのも私があの日学生証を落としたからで。

いやその前にユズのおかげだ。
ユズがあの時、半ば無理矢理クラブへ連れて行ってくれたから。

彼女の好奇心を私は今初めて感謝したかもしれない。