「まるで娘を取られた父親の気分だわ…」
「何言ってんの…」
「複雑な心境なの!」
報告した時はあんなに喜んでたくせに。
わぁわぁ騒ぎながら。
「…あぁ、寂しいんだ?」
「うるさい!」
「ユズ〜、おいで〜!ぎゅってしてあげるから〜」
「来んな来んな!リア充め!」
学校の最寄り駅には桜の木が植えられており、毎年綺麗な桜を咲かせる。
今年はもうほとんどが散っていてピンクの中に緑が散りばめられていた。
「あ、あの子絶対新入生だ」
ユズの視線の先には真新しい制服を着ている子が1人いた。
規則通り真面目に制服を着こなしてして分かりやすい。
「私達もう3年生なんだねぇ、感慨深いわぁ」
「確かに。ユズが無事に進級出来た事は本当に感慨深いよ」
「ふは、言うねぇ。朝から喧嘩売ってる?」
「あれれ、誰のおかげだっけな」
「翠のおかげです。ありがとうございました」
「よろしい」
ファイティングポーズをしたユズを進級させることが出来たのは追試テスト前の猛勉強のおかげ。
つまり、私が根気強く教えたおかげでもあるのだ。

