家を出る時間になって駅に向かっていると後ろからパタパタと足音が聞こえてきて振り返った。
「あ、おはよ」
「おはよ〜〜」
「あれ、髪切ったの?ボブ珍しいね」
「そ、昨日切りに行った。今まで肩くらいの中途半端な長さだったから思い切ったんだけど、どう?」
「かわいー」
「だよね、知ってる」
つい一昨日もユズと会っていたからか、久しぶりという感じは全くしない。
もう4月に入ったというのに、まだまだ寒さは続いていた。
「もう受験生って早くない?」
「確かに」
「翠は進路決まったの?」
「あー、県内の大学に行くつもり」
「マジで?あそこ結構有名だもんね。翠は頭良いし、合格しそう」
「ユズは?」
「私は専門学校かなぁ」
他愛もない話をしながらいつも通りの毎日が続く事が今の私の幸せなんだと思う。
ブブッ、とスマホが揺れて画面を見るとそれは理人さんからのメールだった。
《おやすみ》
…もう朝ですけども。
アルバイトから昇進した理人さんは、覚える事が増えたのかここ最近は忙しくしているようだった。
それでもこうして合間を縫っては送って来てくれるメールが私は嬉しかった。

