小鳥のさえずりで目が覚めるなんて、なんて優雅な朝なのだろう。

春休みは呆気なく終わり、私は高校3年生で受験生となった。


「翠?」


ドアがノックされる音が聞こえた後、そっと開いた。


「…起きてたの?今日朝から会議あるから早めに家出るわね。朝食用意してるから、翠も遅刻しないように家出なさいよ」

「………わかった、」


薄目で見るお母さんはキャリアウーマンの格好をしていた。

極たまに家に来るようになった佐伯さんのおかげか、お母さんは基本的な料理なら出来るようになり、それが嬉しいのかお母さんはほぼ毎日朝食を作ってくれるようになった。


ガチャン、と玄関のドアが閉まる微かな音が聞こえた後、やっと体を起こして学校の準備をする。

まだぼやける頭で1階に降りると、お母さんが言っていた通り朝食が用意されていた。


「また玉子焼き…」


お母さんの作るだし巻き玉子。
いつの間にか私の好きな食べ物になっていた。