「……ま、そういう事だ」
「いまいち頭が追い付かないんですけど」
「俺が今お前に手を出したら俺は犯罪者になるって事」
「いや違う、それじゃなくて…。“惹かれてる”ってどういう意味…」
「“惹かれてる”の意味?現役女子高生なのにその言葉の意味知らねぇのか」
「もう!!」
ククク、と口元に手を当てて面白そうに笑っている。
…分かっててやってるんだ。
分かってて意地の悪い事をしている。
「でも、私が好きって言った時『帰れ』って!!」
「んまぁ、あの時は自分に引け目があったから」
ごめんな、と頭を撫でられた。
「ま、この続きはお前が高校卒業したらな」
「後1年もあるのに」
「その前に受験生になんだろ。頑張れよ」
じゃあな、と言って理人さんは呆気なく帰って行った。
「なにそれぇ……」
…惹かれてるって、……そういう事だよね。
えっ、好きって事?理人さんが私を?
玄関先で蹲る私を前に、リビングのドアが開いた。
「翠にも大切な人がいるみたいで良かった」
「お母さん、」
「かっこいいじゃない、彼」
私と同じようにしゃがみこんで、ニコニコ笑っている。
「うるさい!もう!」
「あ〜、そういう事言うんだ?お母さんにも教えなさいよ。どんな人なの?」
いつになく上機嫌のお母さんに詰められ、恋バナを繰り広げる事になるのはその数分後。

