「………」
黙った私にお母さんからの視線も、理人さんからの視線も感じてつい顔を伏せた。
「……娘さんはまだ高校生で、僕は21歳で成人しています」
「あ…、」
「多分彼女はこれから先、僕が見れなかった世界を見ていくんだと思います。色んな事を経験して知識として蓄えて」
「そうね」
「もしかしたら僕と一緒に居ることが何か足枷になるかもしれない、僕の存在が彼女の将来を邪魔する事になるかもしれない」
「………」
「そんな事、」
「以前の僕だったらそう思って、そのまま終わっていたと思います」
その一言を聞いて、つい顔を上げた。
理人さんを見るとパチッと目が合った。
困ったように微笑んだ後、再びお母さんへ視線を移した。
「…僕には、生まれた時から親がいません。子供の頃は決して人に褒められないような事も沢山して来ました。その分周りも傷付けて…」
本当に悔しそうな顔をする理人さん。
もう過ぎたことなんだから、と言っても多分彼は自分が許せないだろう。
「独りだと思っていた僕を家族と変わらない愛情を持って接してくれている人が居るという事に気付かせてくれたのは翠さんでした」
「えっ」
「本当に、感謝しています。だから…、」
不意に目が合った。
真面目で、真剣な表情の理人さん。

