いつかのあの日のように静かなリビング。
あの時と違うのは理人さんも一緒にテーブルを囲んで座っているという事。
「ごめんなさい、紅茶しかなくて。飲めるかしら?」
「ありがとうございます。大丈夫です、飲めます」
心做しか緊張している理人さんをよそにお母さんはどこか微笑んでいる。
この前佐伯さんに会った時と逆の立場になった気分。
「………私と翠が周りの母娘のようにこうして話せるようになったのは貴方のおかげのようね」
「えっ」
「本当にありがとう」
「…いえ、僕は何も」
たまたまカッチリした服を着ているせいか、なんだか結婚の挨拶みたい……。
って、付き合ってる訳でもなのに何を考えてるんだ私は。
「貴方達2人は、お友達?それとも…」
「ちょっと!何言ってんの!」
「あら?私だって娘の交友関係くらい知っておきたいわよ」
それに別に付き合えなくても、このまま一緒に居れたら私は嬉しいし。
「理人さんと私は、」
……でももし、理人さんに彼女が出来たら?
少しだけ嫌だなぁ、と思った自分にその続きの言葉が出なかった。

