お墓参りを終えた後、駅のベンチで帰る電車を待つ間理人さんは沢山の話をしてくれた。
「依織くん曰く、俺は両親を足して綺麗に2で割ったような顔と性格らしい」
「えっ、そうなんですか?」
「だから何処に隠れても何考えててもバレてたんだろうな…」
私の知らない依織さんとの思い出やご両親がどんな人だったのか、朱音さん達との出会いまで教えてくれた。
「だいぶ前にさ、『自分の為に真剣になってくれる奴は大事にしろ』って言ったの覚えてるか?」
「覚えてますよ」
「それ、依織くんの受け売りなんだよ」
「そうだったんだ…」
「親代わりに依織くんは俺に色んな事教えてくれた」
今日は晴れていていつも以上に暖かく、潮風が心地よく吹いた。
「俺、生まれた時からめちゃくちゃ愛されてたんだって気付いたよ」
そこにはいつもよりも優しく温かく微笑む理人さんが居た。
「っ、今更気付いたんですか?鈍感ですね」
「こんな風に気付けたのは全部お前のおかげかもな」
それは、電車が来るまでの間。
そっと繋がれた手に私の心臓は跳ね上がった。
理人さんの手は思っていたよりも温かくて大きくて。
絶対に私を見ない理人さんの耳は赤くなっていた。
…このまま、もう少しだけでいいから。
しばらく2人で居たい…。

