ほぼ毎日乗っている電車に理人さんと一緒に乗るなんて少し変な感覚だった。
いつもと変わらない車内なのにいつもと違う気がする。

隣に座っている理人さんをよく見ると髪も綺麗にセットされている事に気付いた。


「緊張してるんですか?」

「うっせ」

「まぁ、仕方ないですよそれは」

「俺墓参りとかした事ねぇし」

「途中でお花買ってから行きましょうね」

「花…、あ、花か。そうだな」


そうしようそうしよう、うんうん。
なんて1人でぶつぶつ言ってる。

口に出しては言わないけど、可愛いと思ってしまった。


「依織さんと話せたんですね」

「…まぁ」

「初めて知る事が多かったですか?」

「多かった。というか、あのクラブの店名から俺の母親に関係してたらしい」

「クラブ?」


それは理人さんが働いているクラブ。
確か店名は【STRAY CATS】だったはずだ。
直訳したら“野良猫達”だけど…。


「俺の母親が猫が好きだったんだと」

「え?」

「依織くんが『暴走族なんて野良猫の集まりと同じようなもんだ』って。かっこつけてそれを英語にしたってこの前依織くんが言ってた」


理人さんが雨音さんの事を知るまでは、適当に名付けたと言われていたらしく、「逆にダサいっつーの」と呟いている。