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依織さんに言われた通りの場所に向かうと小さな空き地が見えた。
この時期だからか、中途半端に伸びた雑草が変色してへたりと倒れている。

夏だときっとここは歩けないほど生えっぱなしなんだろう。


「風邪引きますよ」


サク、という足音を聞いて理人さんは肩をビクリと揺らしたが私だと分かったのか逃げる事はしなかったし、帰れとも言われなかった。


「ここにこんな所があったなんて知りませんでした、穴場ですね」


本当に人気のない公園…、と言っていいのか。
空き地。


「……なんでここが分かったんだよ」


理人さんが座っているベンチの隣に座ってキョロキョロ周りを見ていると隣からそんな小さな声が聞こえた。


「依織さんが教えてくれました」

「……うっざ」

「流石、理人さんの事ならなんでも分かってるんですね」


今日はダボッとしたパーカーを着ている理人さん。
…こうやって毎日新しい理人さんを見ていきたい。


「依織くんがあんなの抱えながら俺と居たなんて知らなかった…」


ずっと一緒に居たからこその戸惑いと困惑と、複雑な感情がぐちゃぐちゃに絡み合っている。

理人さんは今、そんな感じなんだろう。