「そんっ、」
「っふざけんな」
バンッ、と勢いよくドアが開いたと同時に彼の甘い香水の匂いがした。
「っ、理人、さん…」
「お前、いつから」
「なんだよその話。俺知らねぇんだけど」
「理人さん、どうしてここに」
「お前がここに入ってくのが見えたんだよ」
理人さんが怒っている。
それだけは見て分かった。
「そんな事より今のは何の話だって聞いてんだよ」
「理人、」
「俺がなんで捨てられたのかとか、全部知ってて俺に近付いたのかよ」
「………」
「俺の事をやたら構ってたのは罪滅ぼしの為?」
「違う!理人、今まで黙ってて悪かった。話を聞いてくれ!」
「ふざけんなよ!!っ、聞きたくない、何も」
「理人さん!」
「自殺ってなんだそれ。身勝手過ぎんだろ。死ぬぐらいなら最初っから俺なんか産まなきゃ良かったんだよ!!」
パシンッ、と乾いた音が響いた。
叩いたのは、依織さんだった。
部屋の照明が理人さんの前髪に当たって影になっていて表情が見えない。
「そんな事言うんじゃねぇよ」
「…アンタは俺のなんなの?保護者面してんじゃねぇよ!!」
「あ、理人さん待って!」
追わなきゃ。
追いかけて、何か言葉を…。
……なんて声をかければいい?
分からないけど、何を言っても今は全部彼の地雷になりそうで怖いけど。
「っ、すみません!失礼します!!」
1人にしたくない!
私が居たって何も力になれないかもしれないけど。

