「部活の先輩がね、めっちゃオシャレなクラブ見つけたんだって!気にならない!?」

「ならないね」

「なるでしょ!?」


今日の授業内容と1日の感想を書きながら、終始ソワソワしているユズの話を聞く。


「そもそも私達は未成年だしそんな簡単に入れるわけないでしょ」

「本人確認甘くてすんなり入れたらしいよ」

「やばすぎ」


書き終えた日誌をパタンと閉じ、シャーペンや消しゴムを片付けてペンケースを鞄へ入れた。

席を立つとユズもつられるように立ち、「行こうよ」と言い続けている。


「やだよ、ユズの好奇心に付き合ったらろくでもない目に遭うもん」

「うっ、で、でも!今回は真面目な先輩が言ってたから大丈夫だって!」


昔、ゲーム機が流行った時だった。
放課後歩いて帰っている途中に知らないおじさんに『向こうに新しいゲームがあるんだけど、おじさん分からないから一緒にやらない?』と言われユズは疑うことなくついて行った。

ちなみに隣にいた私も巻き込んで。

ユズには多分、『ゲーム機がある』しか聞こえていなかったんだろうなぁ。
当時は親に買って貰えなくて喧嘩までしてたから。


危うく誘拐されそうになったところを近所の人に見つかって事なきを終えたが、その後警察沙汰となりお互いの両親からとんでもない雷が落ちたのだった。