「そんな事より、どうしてお2人はそんなにも理人さんの事を?」

「え?」

「いや、理人さんからはお2人は“施設に居た時から良くしてくれてる”って聞いた事がありましたけど…」


言うなれば赤の他人である子供を気にかけてお世話をするのはそう簡単な話じゃないだろう。

施設には理人さん以外の子達も居たはずだ。
偶然理人さんが2人の目に止まったのか。


「…ごめんね翠ちゃん、さっきの話に戻してもいいかな」

「さっきの話?」

「“雨音”の話」

「なんだ。依織、聞いてたのか」


依織さんは、何かを決意したような表情で重い口を開いた。


「翠ちゃんは“暴走族”っていう集団を知ってる?」

「…なんとなくですけど、聞いた事はあります」

「今じゃもうすっかり都市伝説みたいになってしまったけど、昔は本当に存在したんだ。……俺も、そのうちの1人だった」

「え、?」