「依織さん!?」

「ヒュッ、…は、」

「大丈夫ですか!?」


ゆっくり息をするように促すと、力強く私の袖を握り苦しそうに息をする。

…過呼吸だ。

どうしたらいいんだろう。
救急車を呼ぶべきだろうか。


「っ、あま、ね、」


私を誰かと勘違いをしている?

それよりも先に助けないとっ…。



「何してる」



どこか見覚えのある真っ黒なコートに身を包んだ男の人が私達を訝しげな表情で見下ろしていた。

誰でもいい。誰でもいいから助けを求めないと。
そう思い叫ぶとその人は救急車を呼ぶでもなくゆっくりと私達に近付いた。


「依織。依織、落ち着け。大丈夫だ、ゆっくり息を吸え」

「ふっ、は、……はぁ、っ、」

「…お前のせいじゃないから、」

「っ、はぁ、……さくら、さん…」


息がゆっくりになっていく依織さん。
私は何も出来ずそれをずっと見ているだけだった。