「心配し合って、支え合って生きていくのが俺は家族だと思うけどお前は違う?」
「違わねぇと、思う…」
「じゃあ、なんでお前はいつも誰からも愛されてないみたいに言うんだよ」
そんなんじゃない、と言えない。
愛されるって事が何か分からない。
奏汰や朱音を大事にするのは当たり前で、それが家族になるのか?
「依織くんから、何を教わってきたんだよ」
親がいない俺に、親代わりとして依織くんは俺と接してくれた。
喧嘩は売られても買うな。
悩み事があるなら誰でもいいから吐き出せ。
好き嫌いするな。
寂しいなら寂しいって、言え。
「理人が翠ちゃんに対して何を考えてるのかは知らねぇけど、後先考えずに進むのも大事なんじゃねぇの?」
失ってから後悔しても遅いんだぞ、と依織くんは以前言っていた。
翠に告白された数日後にボソッと呟いたのだ。
自分の為に本気で怒ってくれる奴は大事にした方がいい。
これも依織くんからの受け売りだった。
「…………ムカつく」
「何がだよ、バカタレ」
コン、とお盆の底で軽く叩かれ朱音は裏口へと出て行った。

