「…お前に会う度にどんどん自分の事嫌いになってくわ」
声が震えた。
突き放すのさえ怖かった。
何かが変わりそうで、壊れそうで。
俺達は多分もう会わない方がいい。
俺と出会う前に戻った方がきっと彼女のタメになる。
「…もう会うのやめよう」
俺に悩む必要もない。
最初からお前の世界に俺はいなかったんだから。
「……、だ」
「え?」
「やだっ、そんなの!勝手に終わらせないでよ!」
分かりました、なんて返事ではなく返ってきたのは怒りの言葉だった。
「理人さんに未読無視されて、会えなくて、私がどんな気持ちだったか知らないでしょっ、」
「翠、」
声が震えている。
下を俯いて泣いているんだろう。
ほら、俺は泣かせる事しか……。
「っ、好きなんです…」
思ってもいなかったその言葉に時が止まったかのように感じた。
辺りは静かで、少しでも動けば服の擦れる音が聞こえる程に耳は冴えていた。
「あのコンビニでなんでもない話をするのも、たまに口が悪くなるところも、素直じゃなくて不器用なところも好きなんです」
泣きながら、涙を目に溜めながら俺を真っ直ぐに見る翠の姿に「ぁ、」と小さく声が漏れる。
「……好きなのっ、」
どうしてお前は俺なんかを選ぶんだよ。

